16.追憶

彼が帰ってきた。「こっちにこぉへん?」という、プロポーズの言葉とともに。

出会ったのはいつだったか。正直なところあんまり印象がない。ただ、あの時期私は音楽が好きで共通のアーティストの事をずっと話していた。他にいなかったからかもしれない。

あれから十数年、つかず離れず交流が続いている。私たちに男女の仲とカテゴライズされるような事象はなく、一緒にベッドで眠りともに眠りから覚めとりとめのない話をする。たまに出掛けたり。そんな時彼は一緒に歩いてくれる。

彼は数年に一度、こちらに帰ってくる。そういえば仕事以外で帰る時だけ会っていた。

私は精神的に辛い時期に会いに行っていたと思う。何かが変わる時に弱い私は、彼に、彼の普遍的な友情と何かに安心感を求めて。

大切な何かを手放すと、その隙間に入る何かがあるものだ。

それが彼なのかどうかはわからないけど、私の感情を揺さぶるには十分過ぎる。